【上級DIY】一斗缶・ペール缶で作る大型燻製器!ベーコンも吊るせる本格派

道具

自家製のベーコンを仕込むとき、ふと立ち止まってしまう「長さの壁」というものがあります。

中華鍋や小さな段ボール燻製器では、せっかく丁寧に塩漬けした長い豚バラ肉を、泣く泣く半分に切ったり、無理やり曲げて網に乗せたりすることになります。

「お店のショーケースに並んでいるように、長いまま吊るして、飴色に仕上げたい」

そう思い始めたときが、既製品や簡易的な道具を卒業して、自分だけの道具を作るタイミングなのかもしれません。

今回は、ホームセンターやガソリンスタンドで手に入る「一斗缶」や「ペール缶」を使った、大型燻製器の自作方法をご紹介します。

金属の加工が必要になるため、少しだけハードルは上がります。

けれど、その手間をかけた分だけ、完成した道具への愛着はひとしおです。

自分の身長の半分ほどもある無骨な燻製器から、長いベーコンを取り出す瞬間の高揚感。

その感動を味わうために、少しだけ本格的なDIYの時間を、一緒に始めてみませんか。

 

なぜ「一斗缶・ペール缶」なのか?大型自作の魅力

段ボールや木材でも燻製器は作れますが、なぜあえて金属製の缶を選ぶのか。

そこには、長く、そして安全に燻製を楽しむための合理的な理由があります。

 

長尺の食材を「吊るし」で仕上げられる

最大のメリットは、やはりその高さです。

一斗缶やペール缶を2つ縦に連結することで、十分な高さを確保できます。

これにより、大型のベーコンや鮭の半身(サーモン)などを、切らずにそのまま「吊るし燻製」にすることが可能になります。

食材全体に煙が均一に回り、ムラなく仕上がったときの姿は、言葉を失うほど美しいものです。

 

熱に強く、安全性が高い

私は、燻製において「安全・健康・丁寧さ」を何よりも大切にしたいと考えています。

その点、金属製の缶は熱燻(高温での燻製)にも余裕で耐えられます。

段ボールのように長時間熱を加えることで燃える心配が少なく、木製のようにカビや腐食に怯えることもありません。

使い終わったらガシガシ洗えるのも、長く付き合う道具としては嬉しいポイントです。

 

コスパと「作る楽しみ」の両立

既製品で同じサイズのステンレス燻製器を買おうとすると、数万円は下りません。

しかし、廃材の缶やホームセンターの缶を使えば、本体代は数百円〜数千円で済みます。

浮いた予算を、加工に使う電動ドリルや、精度の高い温度計といった「良い道具」に回すことができます。

 

始める前の準備:材料と道具選び

今回は、失敗が少なく手に入りやすい「一斗缶(またはペール缶)を2段重ねにするタイプ」を作っていきます。

安全に関わる部分ですので、材料選びは少し慎重に進めましょう。

 

1. 缶の選定と「内側」の注意点

まず、一斗缶かペール缶を2つ用意します。

 

一斗缶(角缶)

四角いので加工の位置決めがしやすく、収納時の収まりが良いのが特徴です。

 

ペール缶(丸缶)

強度が強く、蓋の密閉性が高いものが多いです。

丸い網がそのまま使えるメリットがあります。

 

重要:内側のコーティングについて

ここで一つ、とても大切な話をさせてください。

食品以外の用途(塗料やオイルなど)に使われていた廃缶や、新品の缶であっても、内側に錆止めのコーティング塗装がされている場合があります。

これらが燻製の熱で溶け出すと、有害なガスが発生する恐れがあります。

食品衛生法では、食品に触れる器具や容器包装について安全な材質の規格(ポジティブリスト制度など)が定められています。本来、食品用ではない缶の内面塗装はこの基準を満たしていない可能性があるため、食品用として販売されている缶を選ぶか、自己責任において塗装を完全に除去することが重要になります。

必ず「無塗装の缶」を選ぶか、後述するように徹底的に焼き切る処理が必要です。

口に入るものを作る道具ですから、ここだけは妥協せず、安全を最優先にしてください。

(出典/参考リンク) 厚生労働省:食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について

 

2. 必須となる工具

金属加工は、適切な道具があるかどうかで難易度が劇的に変わります。

 

電動ドリル

これがないと始まりません。

空気穴やボルトを通す穴を開けるために必須です。

今後もDIYを続けるなら、コードレスのそこそこパワーがあるものを持っていると、作業がぐっと楽しくなります。

 

金切りバサミ

チップを出し入れする扉を作ったり、缶の底を抜いたりするのに使います。

100円ショップのものではなく、ホームセンターでしっかりしたものを買うのがおすすめです。

 

ヤスリ・軍手

切断面はカミソリのように鋭利です。

怪我を防ぐため、必ず厚手の軍手を着用し、切り口をヤスリで処理します。

※ただし、電動ドリルなどの「回転する電動工具」を使う際は、軍手の繊維が回転部に巻き込まれる恐れがあり大変危険です。ドリル作業中は素手や革手袋を使用し、金属のバリ取り作業では軍手を使うなど、作業内容に応じて安全に使い分けましょう。

(出典リンク参考リンク) 国民生活センター:電動工具の事故に注意!-作業中の「巻き込まれ」や「キックバック」に気を付けて

 

3. 金具・パーツ類

ホームセンターのネジ売り場で揃います。

  • ボルト&ナット(M6サイズ程度): 網を乗せるための支えや、缶の連結に使います。
  • 金網: 缶のサイズに合ったもの。
  • S字フック: 食材を吊るすために使用。
  • 温度計: 蓋に刺せる料理用温度計。

 

製作工程:自分だけの「燻し部屋」を作る

それでは、実際に手を動かしていきましょう。

怪我には十分気をつけて、焦らずゆっくり進めてください。

 

STEP 1:缶の洗浄と空焼き(最重要)

もし、内側に塗装がある缶を使う場合は、加工の前に「空焼き」を行います。

焚き火台やバーベキューコンロの上で缶をガンガンに熱し、塗装を焼き切ります。

ものすごい異臭と煙が出ますので、必ず周囲に迷惑のかからない屋外で行ってください。

塗装が炭化してボロボロになったら、冷ましてから金タワシで完全に磨き落とします。

大変な作業ですが、この工程が、安全で雑味のない燻製を作るための土台となります。

 

STEP 2:缶の連結加工(底抜き)

2つの缶を縦に繋げるために、上に来る缶の「底」を切り抜きます。

  1. ドリルの太いビットで、底面の縁に穴を開けます。
  2. その穴に金切りバサミの刃を入れ、缶切りを開ける要領で底面を切り取ります。
  3. 切り口で手を切らないよう、ペンチで折り返すか、ヤスリで丁寧にバリを取ります。

これで、長い筒状の空間ができあがりました。

 

STEP 3:空気穴とチップ投入口の作成

煙の流れ(ドラフト)を作るための穴を開けます。

【空気調整口】 下段の缶の側面下部に、ドリルで数カ所穴を開けます。

ここから新鮮な空気が入り、チップの燃焼を助けます。

【チップ・ウッド投入口】 長時間燻製する場合、途中でチップやスモークウッドを補充したくなります。

下段の缶の側面に、手が入るくらいの「コの字型」の切り込みを入れ、開閉できる扉を作ります。

切り抜いた鉄板を少し曲げて取っ手のようにすると便利です。

 

STEP 4:網・吊るし棒の受けを作る

食材をセットする場所を作ります。

 

網の受け

上段の缶の、上から15cmくらいの位置に、ドリルで対角線上に穴を開けます。

そこに長いボルトを通し、ナットで固定します。

このボルトが「棚受け」となり、その上に網を乗せることができます。

 

吊るし棒

缶の最上部に、木の棒や金属の棒を渡せるよう、切り込みを入れるか穴を開けます。

ここにS字フックをかけ、その下にベーコンのブロック肉を吊るします。

 

STEP 5:温度計の設置

最後に、蓋の部分にドリルで小さな穴を開け、温度計を差し込みます。

このとき、温度計の先端が「食材が来る位置」の近くになるように調整すると、正確な温度管理ができます。

これで、世界に一つだけの大型自作燻製器の完成です。

 

使い方のコツとメンテナンス

完成した燻製器は、まさに「鉄の要塞」です。

この相棒と長く付き合っていくためのポイントをお伝えします。

 

温度管理のコツ

金属製の缶は熱伝導率が高いため、外気温の影響を強く受けます。

冬場、ここ安曇野のような寒冷地では、缶全体が冷えてしまい、内部の温度が上がりきらないことがあります。

その場合は、断熱シート(不燃性のもの)を外側に巻いたり、ダンボールで囲ったりして保温してあげましょう。

逆に夏場は温度が上がりすぎるので、日陰で作業することをおすすめします。

安全においしく食べるためには、食中毒予防の観点からも中心温度の管理が不可欠です。厚生労働省は食肉の加熱条件として「中心部を75℃で1分間以上加熱すること(または同等の条件)」を推奨しています。温度計を活用して、しっかりと中まで火が通っているか確認しましょう。

(出典/参考リンク) 厚生労働省:食肉の加熱条件に関するQ&A

 

錆(サビ)との戦い

一斗缶やペール缶は、基本的には鉄製です。

使った後に洗ってそのまま放置すると、驚くほどの速さで錆びます。

洗った後はすぐに水分を拭き取り、さらに空焼きして乾燥させるか、薄く食用油を塗って保管してください。

ただ、使い込んで黒光りした缶や、多少の錆もまた「味」だと私は思います。

穴が開くほど錆びない限りは、勲章だと思って愛用してあげてください。

 

まとめ:手間をかけた分だけ、煙は美味しくなる

一斗缶やペール缶で作る燻製器は、決してスタイリッシュではありません。

無骨で、場所を取り、加工には手間もかかります。

けれど、自分でドリルを握り、火花を散らして作ったその箱から、飴色に輝く長いベーコンが現れたとき。

その瞬間の感動は、何万円もする高級な道具を買ったときとは、また種類の違う喜びです。

「これを作るために、あのとき苦労して穴を開けたんだな」

そんな記憶というスパイスが、燻製の味をさらに深くしてくれます。

今度の週末は、ホームセンターへ缶を探しに行ってみませんか?

そこから、あなたの燻製ライフは、もっと深く、もっと自由な場所へと広がっていくはずです。

 

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