煙が出ない!?室内特化型「けむらん亭」「イージースモーカー」の実力検証

道具

「家の中で燻製ができたら、どんなにいいだろう」

窓の外は冷たい雨が降っている日や、仕事でくたくたに疲れて帰ってきた夜。

そんな時に、キッチンで小さな煙を操り、お酒に合う最高の一皿を作れたら。

それはきっと、あわただしい日常を取り戻すための、魔法のような時間になるはずです。

しかし、現実的な問題として立ちはだかるのが「煙」と「匂い」です。

「部屋中が焚き火のような匂いになったらどうしよう」

「火災報知器が鳴ったら?」

「家族に嫌がられるんじゃないか」

そんな不安から、室内での燻製に二の足を踏んでいる方はとても多いと思います。

かつて私も、東京の集合住宅に住んでいた頃は、同じ悩みを抱えてベランダで小さくなっていた一人でした。

結論から申し上げます。

現代の技術は静かに、けれど確実に進歩していて、「室内でも、ほぼ煙を出さずに燻製ができる道具」は確かに存在します。

今回は、そんな室内特化型燻製器の二大巨頭とも言える、パナソニックの「けむらん亭」と、サーモスの「イージースモーカー」について、その実力を率直にお話しします。

「本当に煙は出ないのか?」

「味はどうなのか?」

「自分にはどちらが合っているのか?」

決して安い買い物ではないからこそ、メリットもデメリットも包み隠さず、私の実感を交えて検証していきます。

 

室内で燻製をするということ、その現実と魅力

まず最初に、燻製ライターとして少しだけ厳しい現実、いや「正直な話」をお伝えしなければなりません。

どんなに高性能な「室内用燻製器」を使ったとしても、「匂いを完全にゼロにする」ことは、残念ながら不可能です。

食材が燻されるということは、そこに木の香りと、食材から出る脂が焼ける匂いが生まれるということだからです。

しかし、「煙」そのものを極限まで抑えることは、道具選び次第で十分に可能です。

ベランダで風向きを気にしたり、ご近所の洗濯物に怯えたりすることなく、換気扇の下で静かに燻製を楽しめる。

これは、私たち燻製好きにとって、あるいは「これから火のある暮らしを始めたい」と思う人にとって、革命的なことです。

ここでは、室内燻製を成功させるための道具選びの基準と、それぞれの特徴を深掘りしていきます。

 

なぜ「煙が出ない」と言えるのか

室内用の燻製器が煙を抑えられるのには、明確な理由があります。

一つは、煙を外部に出さず、内部で循環させて分解する仕組みを持っていること(電気式)。

もう一つは、高い密閉性で煙を閉じ込め、短時間の加熱で火を消してしまうこと(保温調理式)。

この「仕組みの違い」を理解することが、失敗しない道具選びの第一歩です。

 

【電気式の傑作】パナソニック「けむらん亭」の実力

もしあなたが、「予算はかかってもいいから、とにかく手軽に、失敗なく、煙を気にせず燻製を楽しみたい」と考えているなら、パナソニックの「けむらん亭」がもっとも有力な選択肢になります。

これは、燻製愛好家の間でも「いつかは欲しい」と語られることの多い、ロースター型の燻製器です。

 

触媒フィルターが生み出す「無煙」に近い体験

けむらん亭の最大の特徴は、本体内部に搭載された「触媒フィルター」にあります。

これは、発生した煙や匂いの成分を分解・浄化してから排出するという、非常に高度なシステムです。

実際に使ってみると驚くのですが、調理中に本体から漏れ出る煙は、目視ではほとんど確認できません。

もちろん、燻製特有の香ばしい匂いは多少漂いますが、それは「キッチンでサンマを焼いたとき」と同じくらいのレベルです。

リビングでテレビを見ている家族が「あ、何かいい匂いがするな」と気づく程度で、「煙たい!」と苦情を言われるような事態にはなりにくいでしょう。

実際にメーカーの公式データでも、この触媒フィルターと強制排気ファンの組み合わせによって、煙の排出を約90%カット(※パナソニック調べ)できることが実証されています。感覚だけでなく、数値としても「部屋で使える」性能が裏付けられているのです。

(出典リンク) スモーク&ロースター けむらん亭(特長・機能)|Panasonic 

 

ボタン一つで完結する「再現性」の高さ

私がけむらん亭を信頼しているもう一つの理由は、その「再現性」です。

チップを入れ、食材を並べ、メニューを選んでスタートボタンを押す。

たったこれだけで、温度管理も時間管理もすべて機械がやってくれます。

燻製でもっとも難しい「温度調整」を自動で行ってくれるため、失敗のリスクが極端に低いのです。

「今日はちょっと疲れているから、手間はかけたくない。でも美味しい燻製は食べたい」

そんなわがままな夜に、これほど頼りになる相棒はいません。

 

けむらん亭を選ぶ前に知っておくべきこと

ただ、完璧に見えるけむらん亭にも、考慮すべき点はあります。

まず、本体サイズがそれなりに大きく、キッチンのスペースを占領すること。

そして、価格が他の燻製道具に比べて高価であることです。

また、燻製できる温度帯が比較的高温(熱燻〜温燻)になるため、「冷燻」のような低温調理はできません。

それでも、「日常的に、安全に燻製を楽しみたい」という願いに対して、これ以上の回答を持っている家電は今のところ他にないと私は感じています。

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【保温調理の魔法】サーモス「イージースモーカー」

一方で、「もっと手軽な価格で始めたい」「キャンプなどのアウトドアでも使いたい」という方におすすめなのが、サーモスの「イージースモーカー」です。

こちらは電気を使わず、ガスコンロやIHクッキングヒーターで加熱する「鍋タイプ」の燻製器です。

 

超耐熱セラミックと真空断熱のコンビネーション

イージースモーカーの仕組みはとてもユニークで、そして理にかなっています。

まず、超耐熱セラミックの鍋でチップを加熱し、煙を出します。

所定の時間加熱したら、火を止め、鍋ごと「魔法瓶構造の保温容器」に入れてしまいます。

あとは放っておくだけ。

保温容器の中でじっくりと熱が通り、煙が食材に染み込んでいくのです。

この「保温調理」の時間は、火を使っていません。

つまり、煙が発生し続けるわけではなく、最初に鍋の中に満ちた煙だけで燻すことになります。

そのため、部屋に漏れ出る煙の量は極めて少なくなります。

 

IH対応という大きなメリット

多くの土鍋型燻製器がガス火専用である中で、イージースモーカーは「IH対応」である点も見逃せません。

最近の住宅やマンションはIHキッチンが標準であることも多いため、熱源を選ばずに使えるのは大きな強みです。

もちろん、カセットコンロを使えばベランダや庭、キャンプ場でも活躍します。

電気式であるけむらん亭が「室内専用」であるのに対し、イージースモーカーは「どこへでも連れて行ける」という自由さがあります。

安曇野に移住してからも、庭先でちょっと燻製をしたいときには、この手軽さが重宝しています。

 

若干の「慣れ」は必要

イージースモーカーは火加減の調整を自分で行う必要があるため、けむらん亭ほどのフルオート感はありません。

チップの量や加熱時間を間違えると、酸っぱくなったり、色がつきすぎたりすることもあります。

私も最初の頃は、加熱しすぎて食材をパサパサにしてしまったことがありました。

ただし、慣れるまでは「加熱不足」にだけは十分に注意してください。特に肉類を燻製する場合、食中毒を防ぐためには中心部までしっかりと火を通す必要があります。厚生労働省も「中心温度75℃で1分間以上の加熱」を推奨していますので、不安なときは温度計を使って確認することをおすすめします。

しかし、その「試行錯誤」こそが燻製の楽しさだとも言えます。

「今回はもう少し時間を短くしてみようか」

「チップをブレンドしてみようか」

そんなふうに、自分で火と時間をコントロールし、自分にとっての「ちょうどいい」を探す感覚を楽しみたい方には、こちらの方が愛着が湧くかもしれません。

(参考リンク) 食中毒予防:お肉はよく加熱して食べよう|厚生労働省 

 

 

あなたの暮らしに合うのはどっち?

ここまで見てきた二つの燻製器ですが、どちらが優れているかというよりは、「あなたのライフスタイルにどちらがフィットするか」で選ぶのが正解です。

迷っている方のために、選ぶ基準を整理してみましょう。

「けむらん亭」がおすすめな人

  • とにかく煙と匂いを最小限に抑えたい人。
  • 温度管理や火加減の失敗をしたくない人。
  • キッチンに常設するスペースがある人。
  • 「道具」としての機能美や、家電としての利便性を重視する人。

「イージースモーカー」がおすすめな人

  • 初期費用を抑えて、まずは気軽に始めてみたい人。
  • キッチンだけでなく、庭やキャンプでも使いたい人。
  • コンパクトに収納したい人。
  • 自分で火加減を調整するプロセスも楽しみたい人。
  • IHキッチンを使っていて、対応する鍋を探している人。

 

室内燻製をさらに快適にするためのヒント

最後に、どちらの道具を選ぶにしても、室内での燻製をより快適に、そして安全に楽しむための小さなコツをお伝えします。

安全と心地よさは、燻製を楽しむための土台ですから。

 

換気扇の「強」は必須

いくら「煙が出ない」と謳われていても、微量の煙や一酸化炭素のリスクはゼロではありません。

調理中は必ず換気扇を「強」にして回してください。

もし可能であれば、キッチンの窓を少し開けて空気の通り道を作ると、より匂いがこもりにくく、安心です。

消防庁なども、屋内での調理器具使用時には「必ず換気扇を回すこと」「新鮮な空気を取り入れること」を強く呼びかけています。特に気密性の高いマンションでは、自分と家族の安全を守るためにも、換気はマナーではなく必須ルールとして徹底しましょう。

(参考リンク) 住宅で起きる一酸化炭素中毒事故に注意!|東京消防庁

 

脂の多い食材にはアルミホイルを

豚バラ肉やサンマなど、脂の多い食材を燻製する場合、落ちた脂がチップや熱源に触れると、どうしても煙の量が増えてしまいます。

網の上にアルミホイルを敷き、その上に食材を置くか、脂受け皿をしっかりと活用することで、余計な煙を抑えることができます。

これは煙対策だけでなく、後片付けを楽にするためにも重要なポイントです。

面倒な片付けが減れば、それだけ「またやろう」という気持ちになれますから。

 

まとめ:煙の向こうにある、豊かな時間

今回は、室内での燻製を可能にする二つの名機、「けむらん亭」と「イージースモーカー」についてご紹介しました。

記事のポイントを振り返ります。

  • 室内燻製の現実:最新の道具を使えば煙はほぼ抑えられるが、匂いは完全には消えない(換気は必須)。
  • パナソニック「けむらん亭」:触媒フィルターによる圧倒的な消煙機能と、ボタン一つの手軽さが魅力。予算とスペースが許すなら、日常に溶け込む最強の選択肢。
  • サーモス「イージースモーカー」:保温調理による無煙化と、IH対応・持ち運び可能な利便性が魅力。コスパ重視や、手間も楽しみたいならこちら。
  • 選び方の基準:完全に手間を省きたいなら電気式、自分で操る楽しさや汎用性を取るなら鍋タイプ。

どちらを選んだとしても、あなたのキッチンに「燻製」という新しい選択肢が増えることは間違いありません。

平日の夜、スーパーで買ってきた普通のチーズやちくわが、スイッチひとつ、あるいは鍋ひとつで、極上のつまみに変わる。

部屋に漂うかすかな燻製の香りを嗅ぎながら、好きなお酒をグラスに注ぐ。

そんな、静かで豊かな時間が待っています。

「煙が出ない」ということは、それだけ気兼ねなく、日常的にその楽しみを味わえるということです。

ぜひ、あなたの暮らしに合った一台を選んで、素敵な燻製ライフを始めてみてください。

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